新しい恋がはじまる春うららドラえもんの声もかはつて 杉田加代子

なんやどうも大山のぶ代ドラえもんが今日までのようですな。
杉田さんの歌はそういう何かが変わっていく予感を読んだもんでっしゃろ。
 新聞の見出しなんかは「初代声優集大成スペシャル」なんて銘うっとりますが、
このドラえもんは初代やあらしまへん。これはわてらが高校時代に始まった2期目で、初代は小学時代にほんの一年ぐらいで終わってま。
 あの時の歌「僕のドラえもんが町を歩けば、みんなみんなが振り返るよ。はぁドラドラ、はぁドラドラ、風切るオツムはつるつるてんだよ、ドタドタあんよは偏平足だよ・・・」この方がしっくりきます。
そりゃそうでんがな、高校時代は、もうアニメなんか見てまへんでした。実は同世代はガンダム一期生なんですけど、わては知りまへんねん。
 その頃は演劇少年・文学少年・ギター少年で、寺山修司唐十郎中原中也中島みゆきなんかとべっちゃりでしたから。
せやからドラえもんの声は大山のぶ代より富田耕生なんですわ。
富田さんは、ドラえもんの少し前に魔法使いチャッピーのパンダ役、ドンちゃんの声をしていたはって、その声が好きやったからドラえもんもすぐに好きになりましてん。
もともと大好きな漫画やったしね。
 声優は番組が長いほど変わるんはしゃあないけど、しっくりはまって欲しいもんですな。
わてのアカンのは栗田のルパンでんな。あれはなんやルパンの感情より、山田康雄やったら、こないにしゃべるんちゃうか、とか声色に気ぃとられとる。
最近、サザエさんのカツオの声が先代そっくりになってきやはったけど、あれは富永み―なが自分なりのカツオ像を考えるうちにああなったんちゃいますかな。
初めはだいぶ違てましたからな。あれはあれで肉がついたんでんな。ところが栗田貫一は肉がない。皮もかぶっとるかどうか。
まぁ、特番の単発やからしゃあないかも知れんけど・・・自分のルパンはないんでんな。
そう思いながら不意に自分の短歌は肉があるんかな、と思た。小手先ちやうかと。
せや、多分、小手先やから昨年、出版用の三十首を選びきれへんかったんやな。
今年は、一首でも肉感のある短歌を詠みたいもんですわ。

ほな、今日の(三月十八日の)足が止まった短歌のオハナシでも・・・・・・



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 メガホンを取れ 思い切り叫べ 愛は永遠不変のものじゃないから
                         
                          やまもとまき
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 そうだ、今しかないんだ、そら叫べ、オジサンが見守ってってやるぞ!
 思わず握りこぶしを作って力んでしもた。せやで、そういう一瞬をものにするさかい、
 永遠に感じる可能性がある愛をつかめんねん。ええ青春歌やね。



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 うたた寝のつららすっかり満ち足りてげになにげなく春にとけこむ
                         
                          斉藤そよ
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これはもう可愛い歌で、メルヘンチックな早春賦やね。
こんな風なつららの詠み方はオジサンにはでけへんわ。

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 いつだつて毒はたつぷり食べてきたさつかりんさつかりんさつかりん
                         
                         村本希理子
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現代食生活の真実やね。
正面切ってきた気風とまじないみたいなサッカリンのリフレインがええね。
この歌には、なんや覚悟のような、諦めのような、もやもやした感じがうまく出てる思うよ。




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 順々にいろはにほへとちるぬるを唱へ小粒の探偵走る
                         
                          樹里
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これは『探偵ごっこ』の光景や思てんけど、まだこんな遊び残ってるんかな。
「いろは」と数えだして「ぬ」で止まった奴が盗人(ぬすっと)組。
ちりぬるおわかよ「た」、で止まったら探偵組で変形鬼ごっこするんやったけど。
息子なんかは(現在小2)しよらへんけどね。
なつかしく、ほほえましく、つい立ち止まってもうた。

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 この橋を越えたらそこは別の国言葉も顔を変わらないのに
                         
                          はぼき
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 この国がそうならんでよかったな、と思うわ。
天竜川と千曲川を越えたら、ソ連の東日本、アメリカの西日本みたいな感じにならんで。
イムジン川に橋はあらへんけど、ほんまそんな感じやろね。
昔、フィンランドからスウェーデンの国境を越えた事があるけど、橋だけでなんも検問もなかった。
あの時の風景も思い出したわ。前年のアメリカとメキシコの国境と180度違ごて、なんやほっとしたん覚えとる。
 


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 くやしくて仕方がなくてくやしさがスーツの中でくやしく匂う
                         
                          足立尚彦
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短歌は三十一文字しかない。言葉は大事にせなあかん、同種や同じ言葉の繰り返しはようないで。
そないいわれたことが何度もあるけど、この足立さんの歌で3回のくやしはどれも消されへんね。
ええ味で、ほんま「くやし」が匂い立ってるわ。



   ほな、今回はこんなこってす。
   また。気ぃ向いたときに。